「ダメ」
「どうしたんだ?哀」
「変身できないわ」
「なんだって!!」
変身できないとつぶやく哀に、ヒョウちゃんは驚きの言葉を上げたのだった。
魔法少女 マジカル☆哀 ピンチ!マジカル☆哀戦闘不能!? 後編
「どうしたんだあ!なぜ変身できないんだあ!?」
ヒョウちゃんが変身できない理由を哀に聞く。そんなヒョウちゃんに、哀は平然と答えた。
「…忘れたわ…」
「な、なにを?…」
唐突すぎる言葉に反応できずヒョウちゃんは、ただ言葉を返す。
「試験管……」
「のわにーーーーーー!!」
驚きの余りヒョウちゃんの顔がぐちゃぐちゃに歪む。
実は博士の時のどたばた騒ぎで試験管は地下室に置いてきてしまったのだ。
「ど、どうするんだーーー!!変身できないじゃないかーーー!!」
「困ったわね…」
哀はたいして困ってもいない口調で言う。
魔法のアイテムを忘れて変身できないなど魔法少女史上で前代未聞である。
「くそお!あいつには死んでも頼りたくないしどうすればいいんだああ!!」
ヒョウちゃんが絶叫した。
「灰原〜〜〜〜!!」
唐突に哀を呼ぶ声が近づいてくる。追ってきたコナンが哀とヒョウちゃんに駆け寄ってきた。
「それだあああ!!」
「お、おい!」
目を輝かせてヒョウちゃんはコナンの手からサッカーボールを奪い取る。
どたん!ばたん!ぎーこぎーこ!カチャカチャ!ピロリンピロリン!!
ヒョウちゃんがノコギリやドライバーを持って、奇妙な音を鳴らす。
「なにやってんだ?あいつ?」
「さあ?」
あっけにとられた顔をしているコナンに哀は肩をすくめる。
「んで?あんたの名前は?」
「コ、コナン。江戸川コナンだ」
ヒョウちゃんに急に名前を聞かれたので、コナンは答えた。
「ほら、これを持って!持って!」
「なんだよ。これは?」
奪い取ったサッカーボールをヒョウちゃんは返す。コナンは疑問に思いながらもサッカーボールを受け取った。
「それでレイ、マジカル、ヴィル、ディファイン!って言うんだ」
だから何を言ってるんだ、と言おうとしたコナンだったが、
「レイ、マジカル、ヴィル、ディファイン!」
(く、口が勝手にーー!?)
戸惑うコナンの口からは自分の意思とは関係なく呪文が唱えられる。
「悪いが、あんたの意思は無視させてもらうからなあ」
無邪気に言うヒョウちゃん。七色の光が辺りを包み込んだ!!
「よーし!臨時魔法少女 マジカル☆コナンだあ!」
「だ・れ・が!魔法少女だ!!俺は男だあ!」
怒りの叫びの声を上げる新一。いや、マジカル☆コナンだ。
「俺は魔法少女以外は認めない!!」
きっぱりとヒョウちゃんは言いきる。
「それにしても…なんなんだよ。この格好わああああああああああ!!」
マジカル☆コナンが絶叫する
姿は、新一へと戻っているのだが、その服が昔のアイドルのような衣装だったのである。
まあ言うなれば、新一の姿でマジカル☆哀のような衣装を着てるということだ。
「よし。マジカル☆コナン!マジカルモンスターを退治するんだ!」
そんな叫びなど、まるで聞いてないヒョウちゃんは、新一に向かって言い放った。
「似合ってるわよ。工藤くん」
哀はクスリという笑みを口の端に浮かべる。
「マジカルモンスターってなんだよ?」
「あれ」
「あれよ…」
ヒョウちゃんと哀が、パルルンを指差してみせる。
「俺は探偵で、怪物退治なんか出来るかーーー!!」
「やってもらうぞ」
新一の抗議をヒョウちゃんは気にもかけない。
「だいたい、こんな格好で行けるわけねーだろーーー!!」
「そんなに変かあ?似合ってるぞ」
「そう言う問題じゃねーー!!」
「まあ 安心してくれ!こう言う物もあるからなあ。」
ヒョウちゃんが取り出した物は、ウィッグ、グロスなどの女装用七つ道具であった。
「女装すれば大丈夫だ。」
「ちょ、ちょっと待てーー!!」
新一の顔が引きつり体がずいっと後ろに2,3歩下がる。
「ふっふっふ……」
「うわああああああああ!!」
新一の断末魔の声が空に響き渡った。
「ほら早く!マジカル☆コナン!」
げっそりした顔の新一が後に続く。
つややかな黒髪。整った顔立ち。もともと顔の形の作りがいいせいで黙って立っていればしとやかな美人といった感じに仕上がっている。
「こんな姿…蘭に見せられねーな…」
憔悴しきった顔。東の名探偵と称された知性は見えず現在開店休業状態である。
ヒョウちゃんとマジカル☆コナンは、パルルンへとたどりついた。
「んで、どうするんだよ?いったい…」
「ほら、これ」
ヒョウちゃんから新一に渡されたのは、たくさんのナイフと爆弾である。
「これを使えってのかあああ!!」
「哀は簡単に使ってたぞ?」
(灰原…なんで使えるんだよ…)
哀について新一はちょっと疑問を覚えてしまった。
「俺は、これでいくしかねー!」
コナンはキック力増強シューズのメモリを上げる!
どかっ!!
マジカル☆コナンの右足が上がりサッカーボールを蹴りつける!!
「行っけーーーーーー!!」
ボールは、パルルンめがけ一直線に飛んでいった!!
ぱにょーん!!
パルルンに当たったサッカーボールは間の抜けた音を発して跳ね返された!!
「な、なんだありゃ……」
「もともと子供が遊ぶためのペットだからなあ。怪我しないようクッションみたいになってるんだ」
体表面がゴムのような物質で覆われているため打撃による攻撃が効かないのだ。
「あれがガキのペット!?なんであんなに大きいんだよ!!」
「空気が悪かったんじゃないか?」
「ふざけるなーーーーーーーーー!!」
「いや、ほんとだって」
レインダムの世界とコナンたちの世界では、環境がちがいすぎるせいで特殊な反応を起こすこともあるのである。巨大化はそのひとつの例と言えよう。
「ちくしょーーー!!このやろー!」
マジカル☆コナンは戻ってきたサッカーボールを何度も蹴りつづける!!
ほにゃーんだのぷにょーんだのそういったものすごーく間の抜けた音がこだました。
「な、なんかめちゃくちゃ情けなくなってくるな…」
「ほらほら!効かないんだからマジカル・ハート・アタックで決めてくれ!」
ヒョウちゃんは爆弾をマジカル☆コナンにちらつかせている。
「爆弾犯になんかなりたくねー!!」
泣きそうになりながら、蹴り続けるコナン。…めちゃくちゃ可哀想だな。
「ぱるーん!」
パルルンが気の抜ける鳴き声を発した。転がりながらコナンの方に突っ込んでくる!
「どわああああ!!」
パルルンに吹っ飛ばされる。コナンは転がりながら、電柱にぶち当たった。
「くそ!!なんだ?体が重くなってきやがった!!」
コナンは、動こうとするが体が思うとおりに動いてくれないのだ。
「む。やっぱり失敗だったかあ」
「『やっぱり』ってどういうことだ?」
「いや、急に作ったからなあ。体力がもたないんじゃないかなあって」
「は?」
「いやあ。急ごしらえだったものだから、コナンの体力を過剰に吸い取ってしまっているんだ。いやあ、困ったなあ」
「おい!ちょっと待てえ!」
ヒョウちゃんのあっけらかんとした言葉に、コナンは大声で叫んだ。
「ぱ〜る〜る〜」
パルルンは、コナンの上にのしかかってくる。あの気の抜ける声で鳴いていた。
「パルルンにしてみたら甘えてるんだろうけど」
「そんなこと言ってる場合じゃねーだろ〜が!!」
パルルンにとっては甘えてるつもりであろうが、このままではマジカル☆コナンが押しつぶされてしまうのは目に見えている。
「うぐぐぐぐ……」
コナンの体にかかる重圧はどんどん増してくる。このままではコナンせんべいのできあがり〜。
(やべえ…意識が薄れてきやがった…)
工藤新一死す。享年十七歳。魔法少女の格好でパルルンに押しつぶされ圧死。
(てなことに…なってたまるかああああ!)
はっきり言ってかなり情けない死に方である。
「…こ…のっ!」
コナンが意識が薄れていく中で時計型麻酔銃をパルルンに撃った!
ぷすっ!
どったーん!
途端にパルルンは、そのつぶらな瞳を閉じて眠りについた。
(こ、こんなのをいつも食らってたのか?おっちゃん…)
巨大化したパルルンを一瞬にして眠らせる麻酔銃をくらっているのである。…阿笠博士もすごいものを作ったな。
(からだ大丈夫か?…毛利のおっちゃん…)
小五郎の体について非常に気になってしまうコナンであった。
「だけど状況が変わってねーじゃねーかあ!」
眠らせても押しつぶされそうな状況は実は変わってなかった。
「よーし。それ〜!」
ヒョウちゃんがサッカーボールを掲げる。
サッカーボールがパルルンを吸収する。
「終わり〜」
「終わったんだったらさっさと帰ろうぜ…ん?」
「…………」
周りの野次馬がコナンを凝視している。
(なんでオレの方ばっか見てるんだ?)
まあ急にマジカルモンスターが現れてマジカル☆コナンが退治したのだから当然かもしれないが妙に視線が気になる。
「あ!」
ウィッグがはずれ、短い髪が露わになっている。群集の視線は新一に集中した。
ドサッ!
何かが落ちる音がした。コナンは音のした方角を見る。
路上にカバンが落ちていた。おそらく学校の帰りの途中なのだろう。制服を着た女性は、目を丸くしてコナンを見つめていた。
「し、新一?」
「ら、蘭!?」
コナンの視線のその先、その場に居たのは、毛利蘭だった。
二人は見つめ合っていた。一人は、学校の制服姿で、もう一人は、魔法少女マジカル☆コナンの格好で…
「ど、どちくしょおおおおお〜〜〜〜〜〜!!」
マジカル☆コナンは泣きそうになりながらその場を立ち去ったのだった。
マジカル☆コナンが去った後も、蘭は呆然とその場に立っていた。
「どうしたの?蘭?」
「そ、園子」
園子が呆然とする蘭の肩を叩く。園子の手にはファーストフード店のフライドポテトが握られていた。
「なんか大騒ぎしてるようだけど、あたしがコレ買いに行く間になんかあったの?」
園子が周りの大騒ぎの理由を蘭に聞く。それに対して蘭は大きく首を振った。
「う、ううん」
「そ、まあいいわ。さっさと帰ろう。蘭」
「そ、そうだね。園子」
園子が歩き出す。隣を歩きながら蘭はさっき見た光景を思い出していた。
それは、遠くへ行っている新一が魔法少女のような格好で突然現れた光景。
蘭は大きく首を振る。
(そんなはずない。あれはきっと見間違えよ。だって…)
蘭は思った。
(新一があんなヒラヒラの格好をして女装なんてするわけないもの)
蘭は何度も何度も自分に言い聞かせるようにうなずいていた。
「ふーん。そういうことだったのか…」
マジカルモンスターについて聞いてコナンは納得した顔をした。
ここは、博士の家。2人と一匹は、マジカルモンスターをやっつけた後、ここに戻ってきたのである。
「つまり、この変な生物のせいで、あんなことをやるはめになったと!」
ヒョウちゃんを指差しながら苛立ちを露わにする。
「俺のせいじゃないぞ」
「オメーのせいだろが!」
コナンは、ヒョウちゃんに怒鳴りつける。
「でも、わかんねーんだよなあ」
腕を組みコナンはしきりに首をかしげている。
「灰原ー。なんでオメーはこんなのやってんだよ?」
「それはだなあ!」
ヒョウちゃんが、コナンに説明しようとしたのだが、
きらーん!
哀の殺意の視線がそれを拒んだ!
「い、いや。な、なんでもない」
「ん?」
コナンは哀の視線に気付かなかったので、わけがわからなかったようだ。
「魔法に興味があったからよ…あなたもなったならわかるでしょうけど、元に戻ったのよ」
そんなそぶりは微塵も見せず哀は冷静に言った。
「ああ。あれには俺も驚いた……」
APTXの解毒薬によるものではなく体が成長したのだ。うまくいけば元に戻ることも可能である。
「だがよ!なんで俺に言ってくれなかったんだよ!」
「別に言う事じゃなかったしね……」
「まさか魔法少女の正体を言うわけにはいかないからなあ」
「まあ いいけどよ〜」
哀とヒョウちゃんの言うことを聞いてコナンはがっくりと肩を落とす。
「とにかくこれからはマジカル☆コナンとしてがんばってくれ!」
「絶対やらねー!!」
こうして江戸川コナンが、マジカルモンスター退治に加わったのだった。
あとがき
はっはっは!探偵k。参上!!
というわけで、久しぶりに魔法少女マジカル☆哀の新作をお送りしました。
前回から、7年も経っています。正直言ってこれを送り出すのにこんなに時間がかかるとは思っても見ませんでした。
前回のあとがきで「最後まできちんと仕上げます。読者のみなさん安心してください」と書きましたが、正直気長に待ってもらうしかなさそうです。このままじゃ原作のコナンが終わるのが先か、この小説が終わるのが先か、という感じですね。なんとかせねば。
さて、言い訳はここまで!これからが本当のあとがきです!
ついにコナンに魔法少女の正体がばれてしまいました!!(とっくにばれていたけど)
そしてコナンまで魔法少女の餌食に(笑)!!
次回からはこの小説は魔法少女マジカル☆コナンとなります!!
それではよろしく!!(んなわけねーだろおおおお!!byコナン)
魔法少女9へ
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本気遅くなって申し訳ないことですm(__)m
そしてそしてずっと小説を待っててくれたみなさんもほんとに申し訳ない;;;
そしてありがとうですっ
マジカル哀ちゃんの最新作堪能たっぷり出来ました!(私は←ぉぃ)
マジカルコナンて!?いったい?!興味ばかりが先行してます(笑)
PCも新しくなりやっと始動できました;;;
私のことは忘れてもマジカル哀ちゃんは忘れないで〜(><。
遅くなりましたが探偵K様ありがとう!!感謝しきれないですほんとに。お元気ですか〜?!←ここでいうか!(爆)
byあっきー