……私はあなたが好きでした……
……ごめん。俺、好きな人がいるんだ……
……その人は一体誰なの?……
……そうだな、本当は優しいのにそれを表に出せない、不器用で涙もろい腕っ節だけの女、かな?……
その時だった、白一色だった私の心に、憎しみという大きくて暗い雲が、真っ黒な影を落としたのは……
甘いブラック・ラヴⅠ
蘭「だから昨日あれほど言ったじゃない!早く寝なさいって!!」
新一「うっせーな!大体オメーが怖い怖いって言ってたのがうるさくて眠れなかったんだろ!!」
蘭「だって夜中の公園であんな事があったら誰だって眠れなくなるでしょ!!!」
新一「自分が眠れなかった原因を俺に向かって抗議すんじゃねー!!!!」
朝のラッシュ時のバス停。まわりに人が大勢居るのを完璧に無視して大声でケンカしてる二人。
この二人が『平成のシャーロック・ホームズ』の異名を持つ名探偵、工藤新一と、その助手であり、
恋人でもある毛利蘭だと知ったら、二人のファンは一週間でいなくなってしまうのではないかと思う。
まあ、ほとんどの人がこの二人のやり取りを「痴話喧嘩」としか見ていないようだったが。
蘭「まったく……少しは探偵の自覚を持ちなさいよ。」
新一「お前は俺の親か~~~っ!!!!」
結局、二人の痴話喧嘩はバスに乗るまで続いた。
―――警視庁―――
目暮「今日の用件だが……」
会議室に入るなり目暮警部が話し始めた。目暮警部は警視庁捜査一課の警部で、警察関係者の中で新一と特に関わりが深い人物である。
目暮「昨日、一課の方にファックスでこんなメッセージが送られてきたんだが……君に調べてもらえないかと思ってな……」
と、目暮警部が一枚のファックス用紙を取り出す。そこには、新聞を切り抜いた文字でこう書かれていた。
『時の神が支配する夜に闇が訪れるとき 神に心を囚われし天使が悪魔に変わり 神の国は地獄と化すであろう』
蘭「新一……これ……まさか!」
新一は蘭に向かって頷いた。
新一「昨日の夜、公園であの紅子とかいう占い師が言っていたこととほぼ…っていうか全部同じだな……」
二人は息をのんだ。昨夜、公園で出会った占い師の紅子とこのファックスの差出人は、同一人物なのだろうか?
それとも、なにか他に理由があるのだろうか?そんなことを考えていると、目暮がじれったい顔をして言った。
目暮「あの~…お二人さん、ワシには何のことだかサッパリ……」
新一「あ、すいません警部。」
目暮「それで…昨日の出来事っていうのは?」
新一は昨夜、公園であったこと、占い師紅子の予言(?)のことを説明した。
目暮「つまり、このファックスの送り主がその紅子とかいう占い師の可能性があるわけか……」
新一「そういうことになります。」
目暮「ウ~ム……」
長い沈黙……その沈黙を破ったのは蘭だった。
蘭「目暮警部!私達、もう少し考えてみます。この事件について……」
目暮「…ああ、よろしくたのむよ。」
―――小学校のイチョウ並木―――
阿笠「すまん!遅れてしまった!」
阿笠はイチョウの木下にいる美女に声をかけた。
阿笠「本当にすまん。フサエちゃん。」
フサエと呼ばれた美女が振り向く。
フサエ「いいのよ。どうしても会いたくなって前に教えてくれた阿笠君の家に電話かけたのは私だし。
阿笠君が来てくれるだけでも嬉しいわ。」
阿笠の顔がみるみる赤くなっていく。
このフサエという美女の正式な名前はフサエ・キャンベル・木之下。フサエブランドの考案者であり、阿笠の初恋の人でもある。(四十巻参照)
フサエ「あら……車に財布を忘れたみたい……取ってくるからちょっとまっててもらえるかしら?」
阿笠「あ、ああ。いいよ。」
フサエはごめんと一言言うと車に財布を取りに行った。
阿笠はふうとため息をつき、イチョウにもたれかかる。まだ夏なこともあって、葉はまだ緑色だった。
阿笠「やっぱりイチョウのような黄色いほうが綺麗だのぉ……」
そう言った時、後ろから声がした。
「もう一つ綺麗な色、教えてあげるわ。」
聞いたことのない声だ。阿笠が振り返ると、そこにはフサエが立っていた。
阿笠「あれ?財布を取りにいったんじゃ……」
「いいえ。そんなもの必要ないわ。」
阿笠は目をみはった。フサエの声じゃない。何か違うものの声だ。
「この世で一番綺麗な色……それは……」
次の瞬間、フサエが手を高くふり上げる。その手には、ナイフが握られていた。
阿笠は大声を上げた。校庭に散らばったイチョウの若葉は、鮮血で赤く染まっていた……。
―――二時間後の米花中央病院―――
新一「博士っ!はかせ~っ!!!!!」
病院内に新一の叫び声が響く。何人かの患者が振り向く。
医者「あの…こちらは病院ですので少しお静かに……(^^;」
しかし、医者の注意は新一に届いていなかった。
新一「阿笠博士は?博士はどこですか????!!!!」
蘭「私達、見舞いの者なんです!!!お願いします!博士に会わせてください!」
医者「いや、しかし……」
その時、奥の部屋のドアが開き、中から千葉刑事と白鳥警部が出てきた。
蘭「ち、千葉刑事に白鳥警部!!!」
千葉「あれ?君たちは蘭さんと工藤君……」
千葉刑事の言葉はそれ以上続かなかった。新一が千葉刑事の肩をつかんで激しく揺さぶり始めたからだ。
新一「博士は??!!阿笠博士は大丈夫なんですか????!!!!」
蘭「やめなよ新一……」
千葉刑事は新一に激しく揺さぶられながら答えた。
千葉「あ、阿笠さんが……ナイフで……斬りつけ……られたのは……適切な……治療を……すれば……助かる所……だったので……命
に……別状は……ありません……。もう……意識も……戻ってます……だから……工藤君……揺すらないでくれよ……;;」
白鳥警部が、新一と千葉刑事を引き離しながら言った。
白鳥「そんなに心配なら、直接面会しますか?工藤君。」
―――病室―――
新一「博士っ!!!!だいじょぶか????」
阿笠「おお、新一君。来てくれたのか。」
阿笠はピンピンしていた。
新一「おい!一体……誰に襲われたんだよ!一体……」
その時、阿笠の顔が曇った。信じられないといった顔だ。
阿笠「ふ、フサエちゃん……」
新一「ふ、フサエって!!!あのフサエ・キャンベル・木之下のことかよ!!博士の初恋の人の!!!!!」
阿笠の顔が一瞬赤くなった。しかし、またすぐに青くなる。
新一「あ…わりい…博士…」
蘭「もうっ!探偵なら人に気を使いなさいよ!」
新一「うるせー!!!!」
怪我した知り合いを前にしても相変わらずの二人である。
新一が阿笠に聞く。
新一「で、そのときまでの状況、詳しく教えてくれねーか?博士。」
阿笠は、少し間をおいて話し始めた。
阿笠「フサエちゃんから電話があったんじゃよ。久しぶりに会わないかって……それであの小学校のイチョウの木の下で待ち合わせす
ることになったんじゃ。」
阿笠はまた少し間をおいてまた話し出した。
阿笠「そこに行ってみると確かにフサエちゃんは待っていたよ。イチョウの木にもたれながら……」
新一「で、油断して近づいたときに……か?」
新一の気遣いの無い言葉。蘭が泣きそうな声になる。
蘭「ちょっと新一ぃ……怖いこと言わないでよぉ……」
阿笠が口をはさむ。
阿笠「あ、いや……そうじゃなくて……」
新一「じゃあ、続けて?」
阿笠「そうしたら彼女、車に財布を忘れたって言い出してのぉ……それで見送ったんじゃが……イチョウにもたれかかっていたら彼女
の向かったのとまったく逆の方向から彼女がきてのぉ、その彼女の声が……」
阿笠の顔が暗くなる。
阿笠「別人の声だったんじゃ……全く違う……別人の……」
新一・蘭「…………」
阿笠「それで呆然としてたら……」
新一「切られたってわけか?」
蘭「新一……お願いだから怖いこと言わないで!」
蘭が叫んだ。今にも泣きそうな顔をしている。
新一「あ~~~~っ!!!分かったよ、俺が悪かった!」
全然心のこもっていない謝りかたで蘭にそう言ったあと、新一はまた阿笠の方に向き直る。
新一「博士は何か思い出したらすぐに連絡してくれよ。留守電になってたらメッセージに入れといてくれ。」
阿笠「ああ、分かったよ。」
阿笠は、仕方ないという感じの顔で言った。
―――警視庁捜査一課―――
高木「外国人ハーフの女性……ああ、フサエ・キャンベル・木之下さんですか!確か彼女は今取り調べ室で取り調べを受けているかと
思いますけど。」
高木刑事は新一達に言った。捜査一課には、高木刑事と新一と蘭しか居ない。
高木「しかし、信じられないよ。まさかあのフサエ・キャンベル・木之下が犯人だったなんて。」
どうやら高木刑事は、フサエブランドのファンのようだ。
…そーいや高木刑事が佐藤刑事に渡した誕生日プレゼント、フサエブランドのネックレスだったっけ?…と新一は思った。
そうこう考えていると、一課に佐藤刑事が入ってきた。佐藤刑事は、手に沢山の書類を抱えている。
佐藤「あら?工藤君に蘭さん…来てたの…」
蘭「ど、どうしたんですか?その書類の山…」
蘭が佐藤刑事に聞く。
佐藤「あの工藤君が関わった組織の事件の資料。その人たちのコードネームと本名のリストを作らないといけないのよ。」
新一「あ、そうだったんですか…いや~…手伝えなくてスイマセン(^^;」
新一は、なんだか申し訳なくなってきた。佐藤刑事は明るく答える。
佐藤「だいじょぶよ。私タフだから☆」
と、佐藤刑事がどこかで言ったセリフを言う。そして、捜査資料を自分の机の上に置いた。
と、その時、佐藤刑事が自分の持っていたシャーペンを取り落とした。佐藤刑事は、まるで体を支えるように机に手をつく。
体が小刻みに震えている。
高木「さ、佐藤さん…どうしたんっすか?」
高木刑事が心配そうに佐藤刑事に近寄る。その時、
佐藤「…んで…」
高木「はい?」
佐藤「死んでって言ってんのよ!!!!!!」
いきなり佐藤刑事が高木刑事を押し倒した。
高木「…佐藤…さ…」
新一は目をみはった。佐藤刑事の声が、いつもの声と違う。新一と蘭の心の中で、最悪の予感がうかんだ。
……まさか、博士のときと同じ犯人なのか?!
新一「さ、佐藤刑事!やめてください!」
蘭「佐藤刑事!!!」
新一「くそっ!!!!!!」
新一が佐藤刑事と高木刑事をなんとかして離そうとする。
その時、目暮警部と千葉刑事が一課に入ってくる。
目暮「さ、佐藤君!何をしているんだ!!!!」
千葉「高木さん!大丈夫ですか?!」
目暮警部と千葉刑事が止めに入る。
しかし、なかなか離すことができない。
新一(おかしい。絶対におかしい。佐藤刑事は女性なのに、なんで大の大人の男性三人の力に耐えられるんだ?どうして?!)
新一の手が、佐藤刑事の手に触れた。すると、不思議な声が新一の頭の中に響いた。
『…工藤新一…あなたが悪いのよ…何もかも…あなたがあんなことをしなければ…こんなことにはなってなかったんだから…みんな…』
新一「え?」
新一はあたりを見回した。その時、ふっと佐藤刑事の力が抜けた。佐藤刑事は、そのまま床に倒れこんだ。
……ここはとある森の中の屋敷。
一人の20歳ほどの女が、その屋敷の中にいた。
その女は、膝の長さまである髪を高めのところで二つに束ねている。髪を束ねているゴムは金色。
長くて黒っぽい紅色の長いスカートをはいていて、袖のない服には、紅色のグリフィンが描かれている。
肩から、半透明で薄ピンクの大きな布を羽織っている。顔も、男性の全てが振り向いてしまいそうなほど綺麗だった。
女は、一つの部屋に入った。大きな鏡と小さな机とイスしかない、とても広い部屋。真中にある小さな机には羊皮紙がのっている。
そして鏡には、二人の刑事を心配そうに見つめる、女と同じくらいの歳の少女と必死で二人の刑事を揺さぶるまた同じくらいの歳の少年だった。
女は、イスに座るとつぶやいた。
「まだまだ、これからよ……」
そして、羊皮紙を見る。そこには阿笠博士×フサエ・キャンベル・木之下、佐藤×高木と書いてあった。
「さて、次は……」
女が、羊皮紙に手をかざす。新たな文字が浮かび上がった。
京極 真×鈴木園子
服部平次×遠山和葉
Ⅱへ続く
☆――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――☆
≪あとがき≫
どうも。♪毛利 蘭♪です。
こんな所で終わらしてすみません!(殴らないでね/爆)
この事件、思い切り論理で説明できなくなっちゃってます(^^;
ホントは前文に書いておくべきだったんですけど現実離れした事件が嫌いな人は
ここで読むのをやめてださい(言うの遅)
ホントにむちゃくちゃな話ですみませんでした!
みさきさま
素敵な小説ありがとうございますー!!(一部書体等のタグがエラーを起こしましたので色の変更は削除しております。すみません)
阿笠博士の次は佐藤刑事???いったいこの声の正体はいったい誰???
気になるところで終わってるーー。しかも平次の名前まで!←他はいいのか!?(笑)byあっきー
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