■ カードキャプターさくら 第3のカード編 ■
作:雅波瑠 様



第1章


7月末のある日…
アルプス山脈に近い、スイス、ティチーノ地方の街・ロカルノを訪れていた一組の日本人親子が消息を絶った。

その親子―――佐上冬彦さん(41)とその妻、蓉子さん(38)そして一人息子の6歳の男の子の3人―――は日本からのパッケージツアーに参加し、
マジョーレ湖畔のその街にちょうどたどり着いたところだった。
彼らが街にたどり着いたちょうどその時、突如、深く濃い霧が現れ、一瞬で湖と街を覆い尽くした。
人々は怯え、戦いたが、その視界ゼロの街中を避難しようとする人はいないはずだった。
その後数分で霧は晴れ、街はすぐに元の営みを取り戻したのだが、ツアー客の内その親子の姿だけが忽然と消えていたのだ。


そして月日は過ぎ・・・


8月

ピ・ピ・ピ・ピ・
さくらの部屋の目覚まし時計が鳴り響いている。
しかし、さくらは一向に起きようとはしない。
しばらくして、さくらの机の一番したの引き出しが開き、中から黄色いぬいぐるみが眠い目をこすりながら出てきた。
いや、正確にはぬいぐるみではない。
クロウカードの守護獣《選定者》ケルベロスの仮の姿なのだ。
さくらは彼のことをケロちゃんと呼ぶ。

ケルベロス(仮)は、目覚し時計を止めてさくらを起こした。
ケルベロス(仮)「起きろ!さくら!」
さくら「う〜ん、うるさいなあせっかくの夏休みなんだからゆっくり寝かせてよ…」
ケルベロス(仮)「ええんか?今日は知世達と・・・」
さくら「・・・はっ!そうだった!!」
さくらは飛び起きて、急いで着替えはじめた、
そして
さくら「ねえ、ケロちゃん今何時?」
ケルベロス(仮)は黙って目覚し時計をさくらの前に突き出した。
針はすでに、さくらがタイマーセットした時間より30分後の時間をさしていた。
さくら「ほえーーーーーーーーーーーーー」


ドタンバタンガシャン…


さくらが『無(NOTHING/ナッシング)』のカードを封印してから10日が経過していた。
知世と約束していた撮影会を行ったり、ロンドンからエリオルとスピネル・サンが駆けつけてきてくれたり、
さらに遅れて観月先生と秋月奈久留(ルビー・ムーン)が駆けつけてきたり、みんなでお茶会をしたり、
"悲しい恋"の再演を行ったりと忙しいが楽しい日々だった。6日間は…

だが、7日目にたった一つ悲しいことが起こった。
小狼が香港へ帰ったのだ。

小狼は李家の跡取りであるため、香港に帰ってやらなければならないことがたくさんある。
クロウカードがすべてさくらカードになった時点で、また不思議なことが起こる確率は低い。ということで帰ることになったのだ。
それだけでなく、次はいつ日本に来られるかわからないという。
さくらは涙を堪え、笑顔で小狼を見送ったのだった。


それからさらに3日経った今日、さくらは仲の良いクラスメイト達と一緒に友枝遊園に行くことになっているのだ。

2階でさくらが暴れている間、桃矢は朝食の準備を終え、ゆっくりコーヒーを飲んでいた。
藤隆はすでに大学へ行ったため、家にはいない。

ダダダダダダダダ…

階段を駆け下り、台所に飛び込むと、さくらはまず母・撫子の写真に朝の挨拶をした。
さくら「おはよう!お母さん!おはよう!お兄ちゃん。」
つづけて兄・桃矢にもおはようというと…

桃矢「お・そ・よ・う・」
この兄はいつも意地悪なのだ。
さくらはカチンときたが、時間がないので超スピードでご飯を食べた。
桃矢「すげえ食欲だな、怪獣?」
さくらはさらにカチンときて、桃矢を蹴ろうとした。が、そのとき

キーンコーン

さくら「あ、知世ちゃんかも!!」
玄関に出ると、やはりそれは知世だった。
さくら「知世ちゃんおはよう!!」
知世「おはようございます。」
さくら「ちょっとまって、鞄とってくるから。」
さくらは桃矢を蹴る暇もなく、2階に駆け上がり、前日に準備しておいた鞄をとり、再び階段を駆け下りた。
鞄の中には、おやつ、お弁当、そしてさくらカードが入っている。
いつ何があっても良いように、念のため、何時もさくらカードを携帯することにしているのだ。


しばらく歩いて、さくらと知世はペンギン大王公園前にさしかかった。
そこにはすでに、クラスメイトの佐々木利佳・柳沢奈緒子・三原千春・山崎貴史が到着している。
さくら「みんな!おはよう!!」
千春・山崎・利佳・奈緒子「おはよう」
知世「おはようございます」
千春「それじゃあ、行こう」
さくら「うん」
合流した6人は、ともえだ遊園に向かって歩き出した。


ともえだ遊園の入り口は、まだ開園30分前なのに凄い人だかりができていた。
さくら「ほえーーすごい人」
千春「まだ開園まで30分はあるのに…」
利佳「今月いっぱいはまだオープニングセレモニー期間中だからね。」

そして30分後、開園の時間になると、表にいた人たちが一斉に園内に駆け込んでいった。
さくらたち6人も何とか入場し、
奈緒子「ねえねえ何に乗る?」
さくら「もちろん、ジェットコースター!!」
早速ジェットコースターに乗ることにした。

ジェットコースター乗り場もすごく混雑している。
2列に並び、待つこと50分、ようやくさくらたちの番が回ってきた。

先頭からさくらと知世、千春と山崎、奈緒子と利佳と分かれて乗車した。
安全バーが下げられ、いよいよ出発だ。最初はモーターによりゆっくり坂を登っていく。
その間さくらは、あの時のことを思い出していた。
なでしこ祭の準備にあけくれていたある日、さくらと知世は開園を間近にひかえた友枝遊園をおとずれていた。あの日のことを…
ここは香港にいるはずの小狼と再会した場所、そして、最後のクロウカードである『無』のカードを封印した場所でもあるのだ。
さくら「小狼君…」
ちょうどそのとき、コースターは最初の下りにさしかかった。コースターの最上部から一気に急降下するのだ。
さくら「ほえーーーーーーーーーーーーー」


ジェットコースターの後も6人はミラーハウス、バイキング、メリーゴーラウンド等いろいろなアトラクションを回った。
もちろん奈緒子の好きな(さくらの嫌いな)お化け屋敷も。
そしてあっという間に時間は過ぎ、まもなく午後1時になろうとしていた。

奈緒子「ねえ、そろそろお昼ご飯食べない?」
千春「わたしもおなかすいた。」
さくら「そうだね。もう1時前だし。」
山崎「じゃあ僕がおいしいお店紹介するよ。この遊園地内に最近新しくオープンしたレストランがあるんだよ。」
千春「新しいレストラン?」
山崎「うん。こっちだよ。」

6人は山崎を先頭に、そのレストランに向かって歩いていった。そして…

山崎「ここだよ」
さくら「あれ?この建物って…」
知世「エリオル君たちがお住まいになってた家ですわ。」
山崎「一度とり壊された後、レストランとして再建されたんだよ。遊園地のオープンにはちょっと間に合わなかったみたいだけど。」
奈緒子「はやく入ろうよ」
奈緒子・山崎・千春・利佳はさくらたちより先に入っていった。
知世「行きましょう。」
さくら「うん」

さくらがその館の中に足を踏み入れたとき…

さくら「ほえ?」
知世「どうかなさいましたか?」
さくら「うん…不思議な気配が」
しかしその気配はすぐに消滅してしまう。

レストランもかなり混んでいたが、何とかテーブルに着くことができ、6人はそれぞれ好きな物を注文した。
料理が来るまでの時間、おしゃべりなどをして暇をつぶす。

そのとき、さくらは再び気配を感じた。
先ほどは、すぐに気配を感じなくなったため、気のせいかとも思ったのだが、今度は一向に消えない。
消えるどころか、魔力が増大しているのを感じた。


そのとき…
女の人「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
男の人「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
常に聞こえていた歓声が、一瞬にして悲鳴や怒号に変わった。

さくら「な、何?今の」

悲鳴は断続的に起こり、そのたびに遊園地内が青白く光る。
そして強い魔力を感じる…

行かなければならない。
とは言ったものの、今ヘタに抜け出せば怪しまれてしまう。
しかし、ずっとこのレストランに止まっているわけにも行かない。気配がドンドン近づいているからだ。

さくらは立ち上がり、トイレに行くふりをし、何とかレストランを抜け出した。
さくら(この気配は…クロウカード?ううん、似てるけどちょっと違う…)

レストランの外はひどい状態になっていた。
人も乗り物も…遊園地内のほとんど全てのものが、その容姿をとどめたまま鋼鉄に変わっているのだ。
あと無事なのは知世達がいるレストランのみ。
さくらはなるべくレストランから離れるようにしながら、気配の主を捜した。


そのときだった。
数人の人々こちらに向かって走ってくるのが見えたのは。
その中にはまだ小さな男の子が混ざっている。
男の子「たすけてええ」

そのすぐ後ろを、銀色の女が空を飛びながら追いかけていた。
その銀色の女が逃げまどう人々めがけて手を一振りすると、手のひらから幾筋もの青白い光線が発せられた。

とほぼ同時に男の子が転倒した。
男の子「うわっ」

光線は逃げている人々たちに命中し、彼らを鋼鉄に変えた。
ちょうど転倒した男の子だけは無事である。

銀色の女は、なぜか男の子の頭上を素通りし、さくらに迫ってきた。
そして、2発3発と光線を繰り出してくる。

さくらは紙一重でそれらを避け続けた。
しかし避け続けている内に、その中の一発がレストランに命中し、レストランは、中にいる人々もろとも鋼鉄化してしまった。
そしてレストランの中にいた全員の気配が消えた。
さくら「知世ちゃん…みんな…」

悲しむ暇など無かった。銀色の女が次々と光線を撃ってくるからだ。
そして気がつくと、さくらは、さっき転倒した男の子のすぐ側まで移動していた。
そして銀色の女の光線が正面に迫っていた。

対処する方法は4通り
(方法1)このままここで光線を受け止める。だが魔法なしでは止められないだろう。
(方法2)男の子を抱えて逃げること。これでは素早く動くことが出来なくなり、いつか光線を受けてしまう。
(方法3)男の子を残して逃げること。この場合、男の子は鋼鉄にされてしまうが、その代わり自由に魔法が使えるようになる。
だが、そんな選択、さくらには出来なかった。
さくらは4つ目の方法を選択した。
(方法4)魔法を使い、男の子を助ける。

さくら「星の力を秘めし鍵よ、真の姿をわれの前にしめせ!!契約のもと、さくらが命じる。封印解除〈レリーズ〉!!」
星の鍵が星の杖になった。
男の子が見ている目の前で魔法を発動させたのだ。

さくら『盾(SHIELD/シールド)』
2人の周りに見えないバリアが現れ、光線をはじき返した。


さくらは銀色の女に近づいていき、攻撃を開始した。
さくら「風よ、戒めの鎖となれ!!『風(WINDY/ウィンディ)』」

『風』のカードが発動し、銀色の女に命中する。
銀色の女は一瞬ひるんだが、すぐに体勢を立て直して次の光線を放った。
光線は『風』のカードに直撃し、『風』のカードは鋼鉄の板になってしまった。

さくら「カードが!!」

さらに銀色の女はさくらにもその光を放った。
さくら『跳(JUMP/ジャンプ)』
さくらはとっさにかわした。が、そこにはすでに次の光線がせまっていた。
さくら「あっ」
避けきれない、と思った時、ポシェットから数枚のさくらカードが出てきてさくらの前に長方形に広がり、光線からさくらを守った。
それらのカードはすべて鉄板になり、ヒラヒラと地面へ舞い落ちていった。
さくら「カードさん!!」

だがその時、すでに銀色の女はさくらの目の前にいたのだ。
そして銀色の女は、素手でさくらに殴りかかってきた。
1発目2発目は寸前でかわすことができたが、3発目は避けきれず命中した。
その勢いでさくらは大きくはじき出された。

銀色の女なおもさくらを追い、殴りかかってくる。
避けられないと判断したさくらは、とっさに杖で防いだ。

が…

ボキッ

杖は真っ二つにおれ、鍵に戻ってしまった。
さくら「杖が!!」

銀色の女の攻撃は、まだ終わらない。
もう一発、さくら目掛けてパンチを繰り出してきたのだ。


小狼「雷帝招来!!」
パンチがさくらにあたる寸前、雷撃が銀色の女に命中し、銀色の女は大きく吹き飛ばされた。

さくら「小狼君!!」
小狼「雷帝招来!!」
2発目の雷撃が銀色の女に命中し、女は空に消えていった。

小狼はさくらの元へ駆け寄った。
小狼「大丈夫か?さくら!!」

さくら「うん!!ありがとう小狼君!!」
さくらは小狼に抱きついた。



第2章へ

<あとがき>
ようやく1章が完成いたしました!!
この小説は、アニメ準拠です。
「封印されたカード」(小学6年生夏休み)から、その冬休みくらいまで間のお話にする予定です。
どうか、最後までおつきあい下さいませ。


うにゃぁっさくらの動いてる様子が読んでるうちに鮮明に映像として見えるくらい凄かったです!
小説を映像化して読む私はさくらを久々にテレビで見てる感じでした♪
タイトルにもある第三のカード編というのにも凄くワクワクしてます!
小狼と合流したさくらの行方楽しみにしてます♪by akkiy

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