ヴェノス「僕が…コナン君の?」 コナン「ああ、これ以上博士に迷惑かけたくねーし…。それと、君…つけないでいいよ。」 ヴェノス「分かった…けど、コナンの所だって…。」 コナン「俺のところなら心配ねーよ。行こうぜ。」 そして探偵事務所。ヴェノスを連れたコナンが帰ってきた。 ヴェノス「はじめまして。」 コナンが頼み込んだおかげで、ヴェノスはここにすむ事になった。 蘭「名前は…なんて言うの?」 ヴェノス「ヴェノス・ブルーセイム。えーっと、僕は…人工人間みたいなものなので、親が居ないで…。 博士に拾われて、コナンが…ここに住めと、紹介してくれた。」 蘭「人工人間…?」 ヴェノス「…クローン技術に似た形で作られた、望まれない生まれ子供…。別に気にはしていない。」 蘭「へえ…でも、人間は人間でしょう?良いよ、さて、ご飯ご飯。」 コナンの部屋…。 ヴェノス「彼女…ずいぶん強いな…。お前が姿を消して、もう何年になる?」 コナン「そうだな…2年…ちょっと?」 コナンはあやふやに答えた。 ヴェノス「そうか…。強いけど…追い込まれると弱いタイプか。」 コナン「おいおい。何で分かる…。」 すると、ヴェノスは蘭の体を探り始めた。黒子を捜しているらしい。 目を閉じて…しばらくすると。 ヴェノス「ふふふ…。ちなみに背中に美人な黒子があるな…。あと…太ももにもあるな。 うーん…後はそうだな、胸部分にも」 さすがにその部分は焦る。コナンは怒鳴った。 コナン「ああああ―――!!やめやめ!!!お前…人の体まで見るのか!!!」 ヴェノス「…減る物じゃないだろう?別にいいじゃないか。ちなみに首のところに虫刺されがあるな。」 コナン「だからやめろよ!!!」 蘭「ご飯できたよー。」 食事中。 蘭「二人とも、何の話をしていたの?」 ヴェノス「蘭さんの黒子を調べていたよ。」 ヴェノス以外は飲んでいたお茶や食べ物を噴出した。とても汚いです…。 蘭「え、ええええっ!!!」 ヴェノス「肩の所と太ももと胸のところにあるね。それに首に虫さされ…。あと…足の裏にもひとつ、あるよ。 あ、誤解しないように。コナンにやれと言われてやったまでだから。」 それこそ誤解である。まったく…。 蘭「え…え…?」 蘭はどうやら、恥ずかしさのあまり気を失いかけているようだ。 コナンは必死で助けようとしている。 ヴェノス「ご馳走様でした。あれ?皆さん、どうかしましたか?」 ヴェノスは茶碗類を魔法で片付けながらそう言った。 不自然な光景である。 ヴェノス「…では、僕は先に失礼します。」 コナンの部屋の窓に、ヴェノスは一人…。月を見ていた。 三日月は、ヴェノスの深紅の瞳を美しく照らし出した。 だが、その色は、冷たく…脆く、淡いようで、月そのものだった。 ヴェノスは目を瞑った…。すると、額が輝いた。 光がおさまり、見てみれば…ヴェノスの額には…。 月と、周りに美しく囲む姿が描かれる文様が出されている。 その瞳は、相変わらずの冷たい輝きだった。 ヴェノスは、病的な性格であり…優しさは悲しいほどの深さを持つ。 いわば今までは演技…。無理な演技、ヴェノスは疲れるらしい。 ヴェノス「月夜か…この暗さは、俺が一番落ち着く…。 我力、我本質…全てが癒されるようだ…。 …さて、どうしたものか…。そこにいるのは、コナンだな?」 ヴェノスは振り向かなかった。 コナン「ああ。」 ヴェノス「俺は…いったい、誰だ。」 コナン「…?」 ヴェノス「今でも分からない。俺は何のために作り出された…。実験か?モルモットか?それとも子供としてか? 分からない、俺が分かるのは…組織に作られた事だけだ。何のためだった…? …組織の人間…いったい何人を血の底に追いやっただろう。気に障った者はみな、俺の魔力で…地獄追いやった。 自分の力が分からないから…自分が何なのかさえもわからないから、俺はそうだった。 もしかしたら、俺を殺し屋にしようとしていたのかも知れない。まぁ、俺は出来損ないの人間だ。 …組織にとっては、無駄な感情が入ってしまった。まぁ、俺はそれでいいのだが。」 ヴェノスはすっと息をしながら目を閉じた…。 ググッ…力強くあけたその目は、獣の目だった。ヴェノスは苛立ちを隠せない。 ヴェノス「気に食わない…。ああ…腹ただしい愚か者の軍団…。 必ず…我手で、組織を滅ぼしてやる…。愚か者への怒りの求道を…奴らに…。 あ、悪いな。…もう寝よう。」 二人は眠りに落ちた。同じ時、灰原は試作品の解毒剤を完成させた…。