コナン&金田一final
漆黒のモレンド 第11章〜コナン編〜
作:Gahal様
 

ドアの前で守はバッジでコナンたちに連絡を取ろうとした。そのドアに背を向けたまま…
リネン室のドアが音を立てずにスーッとあき、中から一本の手が伸びてきた。

その手にはハンカチのような物が握られており、次の瞬間、そのハンカチは守の口に当てられていた。

守「うぅ」
数秒後には守は完全に眠ってしまっていた。

「はあっはあっはあっ…」
リネン室から出てきたのは、学校空の帰り道、そして米花ジョイシティと、守を2度も襲った、あの太った男である。

男は、開けたリネン室のドアからおそるおそる、それも出ているかどうかもわからないくらいほんの少しだけ顔を出した、そして上下前後左右、
目と首を限界まで動かし、また、まるで1キロ先の足音をも聞き逃すまいとするかのように、耳を澄まし、周りに人がいないことを確認した。

そして誰もいないと分かるやいなや、ドアの前で横たわっている守の足をつかんで、思いっきりリネン室の中まで引っ張り、
あわててリネン室にのドアを閉めた。

今まで“密輸”専門だった男が始めて“誘拐”などという大それたことをやろうとしているのだ。
そのため男はひどく動揺していた。息などはまるで42.195キロを全力疾走したかのように乱れきり、心拍数も300を超えていた。

男はとてつもなく臆病だった。
深呼吸を100回ほど行ったところで、少しは落ち着いたが。まだ手は小刻みに震えていた。
男まずチューブからしたたり落ちている血を止血しようと手をのばした。

ちょうどそのときだった・・・


「キャーッ!誰か来てー」
突然、リネン室のすぐ外から女の悲鳴が聞こえてきた。

太った男(え?)
悲鳴を聞いた男は思わず伸ばした手を止め、外の音に耳を傾けた。
するとすぐに何人かの足音とともに女と男の声が聞こえてきた。
「どうかされましたか?」
「どうした、なにがあった?」
悲鳴を聞きつけてやってきた看護師や医師のの声だろう。
「あ、怪しい男が、病室で寝ていた子供を連れて こ、この中に…」

すぐにリネン室のドアが開かれた、その外にはたくさんの医師や看護婦、見舞客や歩き回ることができる患者たちが取り囲んでいた。


「何をやっているんだね君は?」
すぐに一人の医師がリネン室内にいる男に向かって尋ねてきた。
太った男「そ、それは…」
男は言葉を詰まらせた。男の足下には薬で眠らされた守が横たわっている。言い逃れは出来ない。

「こ、この子は?」
守の姿をみて、医者は隣にいた看護婦に言った。
「○×△号室の神崎守君です!!」
その医師の問いに看護師が即答した。


その状況の中、太った男は心の中で思い始めていた。
もう終わりだ。しかし、なぜだろう?なぜこうも簡単に見つかってしまったのだろう。
守を眠らせたときは確かに誰も廊下にいなかったはずなのに、なぜ?

その答えはすぐ目の前にあった。
リネン室を取り囲んでいる人混みの中に、ひとつだけ見慣れた顔があったのである。

それは、北海道支部長(8982)の部下であるナンバーエージェント5010(ベンツに乗っていた女)だった。
彼女とは以前、北海道支部へ行ったときに会ったことがある。
5010は太った男の焦る顔をみながら、口元に残酷な笑みをうかべていた。
そう、先ほどの女の悲鳴も5010の演技だったのだ。

医師1「その子をどうする気なんだ?」
看護師「きっと殺す気なのよ」
医師2「ば、馬鹿な真似はやめるんだ」
太った男「いや、わいはそんなつもりは…」
5010「うそよ、足元に置いてある毒を点滴で注入して殺す気なんだわ。」
太った男が足元に置いていたのは、守を眠らせるために使った睡眠薬が入った瓶だった。

男には守を殺す気など無かった。ただボスに気に入られるため、8982が遺した薬(奇術師の死闘15章参照)の材料である守をボスに渡したかっただけなのだ。
しかし言い訳する暇などなかった。5010の言葉を聞いた医師が、直後、そばにいた看護師にこう命じたからだ。「すぐ警察を」と。

“警察”という言葉を聞いた途端、男の中で何かがキレた。
警察が来れば自分などすぐに捕まってしまうだろう。自分の人生も終わってしまう。

たった一人の女のせいで…目の前にいる、5010のせいで!!
怒りで我を忘れた男はその瞬間、隠し持っていた護身用のナイフを取り出し、それを頭上高く振りかざした。

そして、5010に向かって一歩一歩とせまっていった。


しかし、男がたどり着くより早くドアが閉められてしまった。
男が振り下ろしたナイフの先はドアに突き刺さり、カーン!と乾いた音を響かせた。


「あああああああああああああ〜」

ガシッガシッガシッ…

男は絶叫とともにさらに何度かナイフをドアに突き立てた。
やがてナイフの音は消え、絶叫も嗚咽へと変わっていった。





それから約1時間が経過した。
男が立てこもったリネン室がある階の入院患者は安全のため臨時的に他の階の空き病棟へ回されていた。
看護師が呼んだ警察もすでに到着し、病院の周りを完全に封鎖していた。

TV局も何社か集まっていて、病院前から中継を行っている。

「本日午前10時過ぎ、米花不動総合病院に男が押し入りました。
男は刃渡り25センチ程のナイフを所持しており、入院していた男の子を人質にとり、リネン室に立てこもりました。
男は身長160センチ位の太った男で、身元はまだ分かっていませんが、男の子が入院した窓に銃弾が撃ち込まれていることから、
おそらく拳銃も所持している模様です。人質の男の子は、帝丹小学校1年の関崎守君6歳と・・・・」

さらにその周りには、騒ぎを見にやってきた野次馬たちが何重にも取り巻いていた。
それも病院正面のジョイシティ側ではなく、男が立てこもっているリネン室の窓が見える裏側に集中していた。


コナンたち6人も警視庁から戻ってきていたが、すでに病院が封鎖されていたため、病院裏側の野次馬たちの中から事を見守っていた。
平次「どうすんねん工藤?」
コナン「どうするったって…この野次馬の数じゃ、病院に入るどころか近づくことも出来ねえよ。」
平次「やな。どっか窓でも開いててくれたらええんやけど。」
守が捕まっているというのに、何も出来ない自分にコナンはいらだっていた。
どこか中に入れる場所はないか、入れなくても何かできることはないのか。手がかりをつかむため、コナンはあたりをくまなく見渡した。
そして、ふと裏のビルの方を向いたとき、コナンの目に、ある人物の姿が飛び込んできた。

そのビルの屋上にも、各社のマスコミが詰めかけ、中継を行っている。そのビルの中から、一人の男が出てきたのだ。

コナン「あの男…」
男は、ゆっくりビルから出てきた後、何事もなかったかのように歩いていった。

平次「何や?知り合いか?」
コナン「いや…あの男は、守を狙っている、ベンツの男だ。」
平次「なるほどな。じゃあ今上で立てこもってる太った男の仲間なんか?」
コナン「だろうな。おそらく、太った男と何とか接触しようとするはずだ。」
平次「…尾けるか?」
コナン「ああ」
2人は気づかれないようこっそりとその場を離れ、ベンツの男の追跡を開始した。

そのことに灰原たち4人が気づいていなかった。


歩美は心配そうに病院を見上げて言った。
歩美「大丈夫かな、守君」
守君が人質にされている。犯人は拳銃を持ってるかもしれない。そんな情報を聞き、歩美はとても不安だった。
そんな歩美の不安を和らげてあげるために光彦は言った。

光彦「だ、大丈夫ですよ。きっと」

元太は、どこかからなんとかして病院内に入ろうとして警官に見つかり、もめていた。
元太「いいだろ。俺は守の友達なんだ、入れてくれよ!!」
警官「だめだめ。危ないから下がって!!」

元太「ちぇっ!」
警官に追い返された元太は、ややふてくされながら歩美・光彦・灰原がいるところへ戻っていった。

光彦「元太君」
歩美「どうだった?入れそう?」
元太「危ないからダメだとよ。」
光彦「そんな〜」
元太「そういえば、どこ行ったんだ?コナンのやつ!!」
歩美・光彦「え?」
4人はようやくコナンと平次の姿がないことに気が付いた。

光彦「コナン君だけじゃありません。平次さんもいませんよ。」
歩美「ホントだ。コナンく〜ん、どこ〜?」
3人はあたりをキョロキョロ見回しながらコナンの名前を呼び、探した。

光彦「一体どこ行ったんでしょう?」
元太「はっ!まさか、自分たちだけ中に入ったんじゃ…」
歩美「え〜っ?」
光彦「ありえますね、コナン君なら。」

元太「くそ〜っ、ぬけ駆けされてたまるか!!俺たちも入るぞ。」
光彦「きっとどこかに入れる場所があるはずです。探しましょう」
3人「お〜」

灰原「やめときなさい。」
今にも駆けだしていきそうな3人を止めたのは灰原だった。

3人「え?」
灰原「人質をとって立てこもった犯人の説得は慎重を要するのよ。探偵だからってヘタに動けば、人質の命を危険にさらすことになるわ。
そう、今必要なのは探偵じゃなくて交渉人よ。それに…」
灰原はくるっと病院から反対の方に向き直った。

灰原「江戸川君たちは病院の中には入ってないわ。確か、2人で米花ジョイシティの方へ歩いていくのを見たような気がするわ。」
光彦「ホントですか」
元太「でもよ、こんな時に何しにジョイシティに行ったんだ?」


コナンと平次は、ベンツの男を追って米花ジョイシティの中に入っていた。
ベンツの男は米花ジョイシティの中をなおも歩いていく。手には大きめのバッグをもっている。

平次「どこへ行く気なんや?」
コナン「さあな」
やがて、ベンツの男はある場所へと到着した。そこは、観覧車だった。

男は観覧車に乗り込んだ。
そして、男の乗った席はどんどん上昇していく。
コナンと平次は顔を見合わせた。
平次「なんや?いきなり観覧車に乗りよったで。」
コナン「一体どうして?」
そのとき、ジョイシティ内の観覧車に設置されている屋外モニターにはちょうどニュースが映っていた。

そのニュースが新たな情報を伝えた。コナンたちは観覧車に乗った男の方に目を向けながら、ニュースの声に耳だけ傾けてた。
ニュース「新しく入った情報です。男が警察に逃走用の車を用意した模様です。繰り返します男が…」
コナン「車?なぜ車なんか?」
そのとき、男がもっていたバッグの中からなにかを取りだした。

それはいくつかのパーツで出来ており、男は観覧車の中でそれを組み立て始めた。
やがてそれは銃の形になっていった。

それは狙撃用猟銃(スナイパーライフル)だった。

そして、ベンツの男の席が観覧車のちょうど真上にさしかかった瞬間、男は銃を観覧車の電源にむけて発砲した。
その銃弾はものの見事に電源回路を切断し、電気を失った観覧車はその位置で停止してしまった。
観覧車が完全に止まったのを確認し、男は銃口を米花不動総合病院の方へ向けた。

ニュース「え〜今、男が要求した車が到着しました。どうやら病院の正面玄関につけられるようです。
今、車が正面玄関前に停止しました。まもなく犯人が出てくる模様です。まもなく…」

コナン「そうか、わかったぞ。太った男が守を病院の外へ連れ出したところを、撃ち殺す気なんだ。」
平次「なるほどな、あの男多分さっきのビルの屋上から撃とうと思ってたんや、そやけどその屋上にTV局のカメラやらキャスターやらが
あがってきたから、場所を変えなあかんようになったんや。」

コナン「させるか!!」
コナンは“ボール射出ベルト”のボールを、“キック力増強シューズ”で蹴った。

ボールは、男めがけてまっすぐ飛んでいった。
しかし男はライフルの銃口をボールに向け、撃った。


パァン!!

ボールは、男に当たる直前で破裂し、そのボールを貫通した銃弾は、コナンが腰に巻いている“ボール射出ベルト”のバックルに命中した。


コナン「うぁっ!!」
その勢いで、コナンは後ろに吹っ飛ばされてしまった。
そして、2〜3度バウンドした後、コナンは地面に倒れ込んでしまった。

平次「工藤!!」
その様子をみていた平次があわてて駆け寄った。



その間に男は再び銃口を病院の方に向け直した。
平次「大丈夫か!?」
平次は、コナンの体を揺すりながら聞いた。
コナン「だ、大丈夫。」
コナンは、ゆっくりと体を起こし、平次の体にもたれかかるような格好になっていた。

幸いにも、銃弾はバックルに当たりはしたが、貫通はしていなかった。

ニュース「たった今、たった今病院の中から男が出てきました。人質の男の子も一緒です…」
その間に男は再び銃口を病院のほうに向けなおした。そして…


ズドォォーン!
銃弾は発射されてしまった。

銃弾はコナンの頭上を通過し、病院玄関前まで到達した。
そしてその直後、病院玄関前から耳をつんざくような悲鳴が響き渡った。

キャーーーーッ!!

それは惨劇を目の当たりにした女性看護師の悲鳴だった。
そしてそれは病院の正面玄関付近にいる人全体に広がっていった。

「救急車、早く救急車を!!」
「って、ここ病院の前だろ!!はやく中で治療を」
「だめだ・・・もう死んでる」


第12章(コナン編)へつづく
<第11章金田一編はこちら>
Gahal様のコナン&金田一final
う・・・撃たれた?!間に合った?くぅぅっ
気になるところで終わってます!わーんっ←落ち着け(爆)
やはりこの場合狙われたのは守君ではなく・・・・・
コナンと平次のコンビ息がピッタリでいいですー♪byあっきー

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