「なんでこんなことをやらなきゃいけないんだ……」

コナンは疲れたようにつぶやいた。

それは超人気歌手が出す新曲のCDの発売日を待ち焦がれるがごとく……

面白いドラマの次回を首を長くして待とうとするがごとく!

小学生が楽しみにして待ち焦がれるイベントのひとつ。

今日は帝丹小学校の遠足である。


魔法少女 マジカル☆哀 遠足に行こう!
作:探偵K様


子供たちが2列に並んで元気よく歩いている。どの顔も笑顔であふれていた。

目的地は米花中央公園。春には花見が行われたり、カップルによるデートスポットにもなっている公園だ。

「遠足ねえ……」

コナンはどうにも気乗りがしない様子である。

クラスのくじ引きの結果、コナンの隣にいて歩いている哀が、

「別にいいじゃない。こういうのも面白いわよ?」

「まあ そうだけどよ〜」

コナンは、まだ不満気な顔をしたままだ。

「それとも?なにか事件でも起きて欲しいの?」

「そ、そういうわけじゃあねえけどよ」

「だったら楽しんでおくのね」

哀はそう言って流行の曲を鼻歌で歌い始めた。

コナンは、哀の様子に違和感を感じた。

何やら哀が少し浮かれているような感じなのだ。

(こいつが?まさかなあ?)

哀が浮かれるなんてあるわけないし・・・

するとその時、先頭を歩いていた先生が、

「さあ みんな歌を歌って歩きましょう!」

『行けー行けー!ゆけーゆけー!かめーん!ヤイバー!!』

全員が一斉に仮面ヤイバーのテーマソングを合唱し始める。

「ははははははは…」

仮面ヤイバーのテーマソングが聞こえるなか、コナンは乾いた笑いをするしかなかったのであった。

一方・・・

「む〜。わたしもコナンくんの隣になりたかったのに〜」

仲よさそうに話し合っていた二人を見て歩美が口を尖らす。

コナンの隣になろうと歩美が提案したくじ引きだったが見事にはずれたようである。

また…

「おかしいですねえ。ボクの計算では、ボクの隣は歩美ちゃんになるはずだったんですが…」

「オレも歩美の隣になりたかったぞ〜」

歩美の隣になれなかった元太と光彦のふたりもそれぞれ不満をもらしていたりしていたのであった。



「さあ。着きましたよー!」

先生の掛け声で子供たちは疲れた足を休めようと、それぞれ草の上に小さなビニールシートを広げようとしている。

「あ、灰原さん!こっち!こっち!」

すでにコナンや歩美たちが、集まってビニールシートを広げていた。

哀がリュックを放り投げた時、

「ぐぎゃあ!」

と、リュックからなにかつぶれたような声が聞こえてきた。

「おい?なんか変な声が聞こえなかったかあ?」

「気のせいじゃないの?」

元太の疑問に答えておいて、哀はため息をつくとリュックを開けてみる。

そこには哀が想像した通り……

「ふにゃらー」

目を回しているヒョウちゃんがいたのであった。

「家でおとなしくしてなさいと言ったはずじゃなかった?」

ヒョウちゃんが来たりしたら面倒なことが起こるだろうと思った哀は家にいるよう言っておいたのだが……

「ふ。そんなの聞くはずがないだろう!」

「ま、わかってたけどね」

ぴょこんとリュックから顔を出し胸をはるヒョウちゃんに哀は肩をすくめた。



「だいじょうぶだった?フェンちゃん」

歩美が心配そうに自分のリュックの中を覗き込む。

「ぷはあ!」

酸素がなくなって空気を求める金魚のようにオオカミのような生き物がリュックから顔を出した。

魔法少女 プリティ♪歩美のサポート役であり、ヒョウちゃんのライバルでもあるフェンバルである。

ここにも遠足についてきたのがもう一匹。

「ごめんね。フェンちゃん」

「いや、気にしなくていい。無理矢理ついてきたのはわたしだ」

すまなそうに謝る歩美にフェンバルはまじめに答える。

正確には、「フェンちゃんにも遠足に来てほしいんだもん」という歩美の頼みで連れてこられたのであるが……

ヒョウちゃんがかかわらないかぎりフェンバルは普段はまじめなのである。

(むう……しかし、他の人間に姿を見られるわけには……)

フェンバルが遠足の間どうしようかと考え込んでいると、

ぎゅーーーーーーーっ!

じーっとフェンバルを見ていた歩美が急にフェンバルを抱きしめる。

「やっぱりフェンちゃんってかわい〜〜!」

「あ、歩美〜。や、やめてくれ〜〜〜〜」

抱きしめられたフェンバルは、困り果てた声を出した。

歩美に振りまわされているフェンバルであった。



こんな遠足も平穏に時が進んで今はお昼。お弁当の時間だ。

「歩美ちゃんのお弁当はどんな感じですか?」

「えーとね。卵焼きに……」

光彦と歩美が弁当の見せ合いをしている。

「オレ!オレ!オレのも見てくれよ!!」

元太が弁当箱を取り出した。

「元太くん。すごい弁当箱だねえ」

「本当にすごいですねえ」

元太の弁当箱は、家族で食べるような重箱である。しかも3段重ね。

とても一人で食べるような量ではない……

「もういいだろ?」

弁当の見せ合いばかりで一向に食べようとしないのでコナンの声はあきれている。

哀は、すでに黙々と弁当を食べていた。いつもどおりのマイペースである。

「よっし。それじゃ!」

「「「「いただきまーす!!」」」」

4人の声が合唱する。

「かー!うまかったー!!」

「げ、元太くん。もう食べたんですか!!」

すでに元太の弁当箱の中身は空。ご飯一粒残っていない。なんて速さだ……

「次は、おやつ、おやつ!」

元太がリュックを逆さにする。リュックの中身が、どさどさーっと落ちてきた。

飴玉。ポテトチップス。チョコレートにまんじゅう。クッキーなどなど。

「かあちゃんのところから持ってきたんだぜー」

「元太くん!!おやつは300円までなんだよ!」

「そうですよ!」

歩美と光彦が元太に不満を言う。

「おめーらも食うだろ?」

元太がむさぼるように食っていた手を止めて光彦と歩美に薦めると、

「うん!食べるよ!」

「はい!食べます!」

と、あっさり二人とも前言撤回。

お菓子に買収される光彦と歩美なのだった。



「よしそれじゃ遊ぼうぜー!」

弁当を食べ終わり、おやつも食べ終えたコナンはサッカーボールを取り出した。

なんだかんだ文句を言ってても見事に小学生に適応しているらしい。

「おう!行こうぜーー」

「それでは行きましょう」

元太と光彦がそれに賛成しコナンを追いかける。

哀と歩美の二人もその後に続いて歩き始めた。

「ねえ?灰原さん。」

歩美が哀に近付くと小声で話しかけてきた。

「魔法少女やってるんでしょ?フェンちゃんから聞いたよ?」

「何を言ってるのよ?」

哀は、とぼける。

「あの魔法少女。灰原さんだったんだ」

歩美は同じことをしている仲間を見つけたせいか嬉しそうに笑った。

「お互いがんばろーね!!」

歩美は哀の手をつかむとぶんぶん振り回す。哀は歩美のされるがままになっていた。

「哀!!」

「歩美!!」

ヒョウちゃんとフェンバルが突然それぞれ二人の目の前に現れた。

二匹は遠足の間、二人の側から離れていたのだ。

ヒョウちゃんは哀に言われて、フェンバルは自分からという違いはあるが。

「ヒョウレン!!お前も来ていたのか!」

「フェンバル!?なんでお前もここにいるんだ!!」

ヒョウちゃんとフェンバルが顔を合わせる。とたんに空中でバチバチと視線が交錯した。

「ケンカはやめて!」

「はいはい。」

にらみ合っているヒョウちゃんたちを、歩美と哀は引き離す。

(なにか幼稚園の先生になった気分だわ……)

哀はため息をついた。最近ため息ばかりついている気がする。

「それどころじゃなかった!」

「そうだった!」

ヒョウちゃんとフェンバルは一呼吸置くと、

「マジカルモンスターが現れたんだ!!哀!マジカル☆哀に変身だ!!」

「マジカルモンスターが現れた!!歩美!プリティ♪歩美に変身だ!!」

と、同時に言う。

「ん?」

「む!」

ヒョウちゃんとフェンバルが、むっとしたように顔を合わせる

歩美に正体がばれている以上隠しても意味はない。

そう思った哀は試験管を取り出す。歩美も魔法のステッキを取り出した。

「レイ……マジカル……トランス……ミューテーション」

「レイ!プリティ!ラインド!リリューション!!」

二人がそれぞれ呪文を唱える。七色の光が辺りを包みこんだ!!

光が収まった後には、マジカル☆哀とプリティ♪歩美、二人の魔法少女の姿があった。

「よし!行くぞ!プリティ♪歩美」

「行くぞ〜!マジカル☆哀!!」

またまた同時に言うヒョウちゃんとフェンバル

お互いに嫌い合っていてもなかなかいいコンビのようである。



(わたし、何やってるのかしらね)

マジカルモンスターのところへ向かいながら哀は思った。

組織で薬の研究をしていたが姉の死から組織に反抗し、死のうと思って飲んだ薬は、自分を幸か不幸かこんな体にした。

そして組織から隠れるため小学生として暮らしては来たがいつも違和感はつきまとった。

挙げ句の果てには魔法少女である。

今わけがわからぬヒョウちゃんとともにマジカルモンスターを捕まえている。

(ほんと……何やってるのかしら?)

哀の口元に自分に対する嘲笑が浮かび上がってくる。

「ああ。ここだ。」

フェンバルが言った。

あまり人が来ないさびれた一角である。

二人が着いたところには、マジカルモンスターの姿はまったく見えない。

「逃げられた……?」

「いや、そんなはずない!!」

ヒョウちゃんが否定する。ピリピリとした緊張感があたりを支配した。

そしてそれは、二人の魔法少女の方へと向かって来た!!

ドシュ!ドシュ!

空気の切り裂く音とともに地面から槍のような鋭い土のトゲがマジカル☆哀を襲った!

マジカル☆哀は、自分に向かってくるそれを紙一重で回避する!

その土の槍は、地面へと戻っていく。大量の土の固まりが徐々に集まり始めた!

まるで子供が粘土で作ったような巨人が哀の目の前に出現する。

『サンドゴーレムだ!!』

ヒョウちゃんとフェンバルが同時に叫んだ!

「よーし!プリティ、キュートな魔法少女!プリティ♪歩美!!覚悟しなさい!」

サンドゴーレムを目の前にしてプリティ♪歩美は、名乗りを上げポーズまで決めている。

「そうかー!決めポーズを作ってなかったな!」

「そんなことをしている場合じゃないと思うけど……」

プリティ♪歩美のポーズを見て興奮するヒョウちゃんを横目に哀はつぶやいた。

「それよりさっさと終わらせましょう」

サンドゴーレムに急接近するやマジカル☆哀は爆弾を投げつける!!

「なんでいきなりマジカル・ハート・アタックを使うんだああああ!!」

マジカルフラッシュを使わずいきなりマジカルハートアタックである。魔法少女の法則完全無視である。

どっかーん!!

マジカル・ハート・アタックが土の巨人の腕を破壊する!!

しかし、砕け散った土は、まるで意志を持つかのように巨人のもとへと戻っていく!

「プリティ!ハート!イリュージョン!!」

プリティ♪歩美が呪文を唱えると同時に杖を振る!!

ちゅどーん!

七色の光線がまた巨人の足を壊すが、すぐに元の形へと戻った。

「歩美!それじゃ、ただ壊すだけでどうしようもない!!」

「哀!サンドゴーレムのコアを停止させないとダメだ!!」

ヒョウちゃんとフェンバルが、それぞれの魔法少女にアドバイスを出す。

「!」

土の巨人の中から、無数の鋭いトゲトゲが伸びてくる。

その無数の土の槍は、いっきに二人に襲いかかった!!

二人の魔法少女はそれぞれ土の槍を、粉々に破壊していく!!

「きりがないじゃない」

哀は必死に襲い掛かってくる土の槍をかわし、また破壊しながら不満をもらす。

「コアはどこ!!」

「わからん!!」

ヒョウちゃんは即答する。

「役に立たないわね」

「ほんとにわからないんだあ!!常に土の固まりの中を移動していて……」

哀が言った言葉にヒョウちゃんは反論する。

「うわあああああああ〜〜〜ん!!」

プリティ♪歩美の方は、泣きそうになりながら必死に土の槍を壊していく。

「歩美!危ない!」

土の槍の一団が、プリティ♪歩美の死角から迫ってきた!どうしてもかわせない!

そのとき歩美の前に現れる人影があった。

「灰原さん!!」

歩美への攻撃を一身に受けた哀は、激しく飛ばされる!

「わたしの……ことなんかより……マジカルモンスターの……方を……気にしなさい」

哀は、体に走る痛みをこらえながら、近寄ってきた歩美に注意をうながす。

「それより……吉田さん。手伝ってくれる?」

「うん!何すればいいの!?」

マジカル☆哀は、プリティ♪歩美にどうしてほしいか説明した。

「それじゃ……行くわよ!」

哀の合図で二人の魔法少女が散開する!!

無数の土の槍は二手に分かれて魔法少女たちを追った!

くるっ

二人の魔法少女は急に方向転換する。

マジカル☆哀は右から、プリティ♪歩美は左からそれぞれ土の巨人の方へと向かっていく。

二人は向かってくる土の槍を破壊しながら突っ込んでいった!!

「今よ!」

「うん!」

マジカル☆哀は、マジカル・ハート・アタックを、プリティ♪歩美はプリティ・ハート・イリュージョンを同時に叩き込む!!

ちゅどっかーん!!

サンドゴーレムに二人の魔法少女の同時攻撃が直撃する!

その攻撃の相乗効果がサンドゴーレムの土を全部吹きとばした!

「あった!!コアだ!!」

吹き飛ばされたあとに球状のコアが空中に浮かんでいる。

土がすべて吹き飛ばされたことによって、サンドゴーレムのコアがむきだしになったのだ。

「はい。これで終わりね」

どっかーん!!

マジカル・ハート・アタックをコアに決めて、コアを停止させた。

「さて……このあと誰が捕まえるかだよなあ。フェンバル」

「当然こちらが捕まえるのが正しいよな。ヒョウレン」

ヒョウちゃんとフェンバルが恐い笑顔をしながら話しあっている。

「こっちが先だああああ!!」

「こちらが取るのだ!!」

二匹は激しい言い争いを始めた。

「えーと……」

歩美は、哀に許しを得るように哀を見る。

「譲るわ。」

哀は歩美にぽつりと言った。

(なぜかそんな気分にならないしね……)

はじめの方は、恋の縁結びとかがあって捕まえていた哀だった。しかし自分がしていることに疑問を持ち始めたのだ。

「ありがと!」

右手につけている指輪で歩美はコアを吸収する。

「ああ〜〜〜〜〜!!」

歩美が捕まえたのを見てヒョウちゃんが叫んだ。

「どうやら今回はわたしの勝ちだな!」

「そんなの認めるかああああ!!」

二匹が始めたケンカを横目にしつつ哀は言った。

「それより戻りましょう」

「そうだね」

そして二人の魔法少女はその場から立ち去ったのだった。



「二人とも何してたんだよ。心配したんだぜ」

「そうですよ」

コナンと光彦が、息を切らせている。

元太も同感だというようにうなずいていた。

急にいなくなった歩美と哀を心配した3人はあちこちさがしていたのである。

「悪かったわ」

「ごめんねー。みんな」

哀と歩美は、3人に頭を下げる。

しかし、哀と歩美は互いに顔を合わせると含み笑いをする。

「なにかあったんですか?灰原さん。歩美ちゃん」

光彦が二人に質問するが、

「なんでもないわ」

「なんでもないよ〜」

二人が楽しそうに笑っているのを理解できない3人は互いに顔を見合わせるのであった。



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あとがき

楽しい遠足……のはずだったのだが!!

心の休まる時が哀にはやってこないようである。

さてこの生活いつまで続くのやら?

それは作者のみぞ知る(しかし作者も知らなかったり……)


ぶはっ(笑)さすがや・・・・(笑)
また今回も笑わせてもらいました←なぬ!!
もう哀ちゃんがまんまでかっこいい♪だんだん歩美もお笑いキャラに・・・(待て)
楽しい遠足・・ある意味ヒョウちゃんたちは楽しめたのかも・・・・
なんだかんだいいつつコナンは哀の正体(黒の組織ではない)を知ってそう・・・・(爆笑)
小説ほんとにありがとぉ♪(アクシデントで2回も送ってもろて申し訳ない^^;) byあっきー


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