コナン&金田一final
漆黒のモレンド 第16章
作:Gahal様
中央アルプス山麓南端の山林に着地した怪盗キッドは、地中に隠されたヘリポートがあった場所へと到着していた。
しかし、そのヘリポートは外からは開けられないようだった。

キッドは、他に入れるところは無いかどうか調べるため、山林の中を歩き回っていた。

やがてキッドはそれらしきドアを発見した。
鋼鉄製と思われるそれは所々表面の白い塗料がはがれ、その下から赤茶けた錆が顔をのぞかせていた。
鍵は付いておらず、ノブを回せば開きそうだ。
キッドは早速そのノブに手をかけ回そうとした。が、後ろから誰かが近づいてくる気配を感じたので、すぐにドアから離れ、近くの植え込み(サツキ)の中に姿を隠した。

後ろから来た人物はゆっくりとドアの前まで歩くと立ち止まり、小さな声でキッドに告げた。
「隠れなくてもいいですよ。出てきたまえ、黒羽君。」
それは私立探偵で、怪盗キッドこと黒羽快斗のクラスメイト、そして白馬警視総監の息子である白馬探だった。

キッドはゆっくりと植え込みの中から這い出し、言った。
キッド「だから、オレは黒羽じゃないっての。」
白馬「まあ、そういう事にしておきましょう。どうやら目的は同じみたいですからね。」
それまで、いきなり現れた白馬に対して呆れた顔で接していたキッドだったが、この白馬の言葉を聞いた途端真剣な表情になり、言った。

キッド「…この扉の向こう…か。」
キッドがそう言うと、白馬はそれを肯定するようにニッと笑みを浮かべた。

キッド「でも、どうやってここのことを?」

白馬「ここへ来る前、1ヶ所だけ行ったところがあるんです。」
少し間をおき、白馬はさらに続けた。
白馬「赤島探偵事務所。守君の父から子供達の捜索を依頼された、赤島探偵の事務所です。」(奇術師の死闘9章参照)
キッド「赤島…」

キッドは思い出していた。
北海道で出会ったレッドこと赤島陣一という男のことを…(奇術師の死闘13章参照)



白馬「赤島探偵は、この組織のことをいろいろと調べていたようなんです。九州支部、関西支部、北海道支部の場所も調べ上げられていました。
そしてここの場所の事を記した書類もあったんですよ。」
キッド「で、どうして九州支部でも関西支部でもなくここに来たんだ?」
白馬「忘れたんですか?この組織はどこにあるのか分からない本部、北海道支部、東京支部、関西支部、九州支部から成り立ってるんですよ。
つまり北海道でも東京でも関西でも九州でもないここは…」
キッド「なるほど、ここが組織の本部である可能性が高いってわけか。」
白馬「そいういう事ですよ。」

キッド「それにしても…」
ここでキッドは話題を戻した。

キッド「レッドが守や千枝ちゃんを捜すよう依頼された探偵だったなら、なぜあんな犯罪行為までしてたんだ?」
白馬「彼は探偵ではありませんよ。」
キッド「え?」
白馬「探偵をやっているのは彼の妻の方です。名前は赤島鈴子。」
キッド「赤島鈴子?」
白馬「赤島陣一氏の方は、帰ってこなかった妻を探すために北海道支部に忍び込んだが捕まってしまい、
脅かされたため仕方なく犯罪行為をやるはめになった、というところでしょう。おや?やっと来たようですね。」
キッド「来たって何が・・・」
そう言いかけたキッドだったが、近づいてくる音に気づき、どんどん青ざめていった。

それはパトカーのサイレン音だった。
しかも1台や2台ではない。
それは白馬が呼んだ岐阜県警の警官達だった。

キッドはとっさにハンググライダーを組み立て、上空へと避難した。
どうやらキッド達がいた場所から道路まではそう離れていなかったらしく、上空からだとすぐ近くに見えた。

その道路に100台ほどのパトカーが次々と停止し、中から続々と武装した警官が降りていった。
そして白馬のそばを通りすぎ、次々と建物の中へと突入していった。

建物はすぐに制圧され、中にいた2001という男が逮捕された。
警官達は(白馬を含め)誰一人気づいていなかったのだが、2208(キッドが追ってきた殺し屋)が上空に逃走していったのをキッドだけが目撃していた。
2208は小型ヘリを使い、東京方面へ飛んでいるようだった。
キッドも、ハンググライダーで東京方面へと飛んでいった。


米花不動総合病院では、警備に当たっていた警官達が次々と病院から退去していた。
それでも、人質である守の安全のため、医師に変装した白鳥警部や看護師に変装した佐藤警部補など、病院関係者に変装した何人かの警察官で守の病室を交代で見張ることになっていた。
そして、ベンツの男から与えられていた30分もあっという間に過ぎてしまった。

ベンツの男「時間だ」
ベンツの男は、ゆっくりと米花不動総合病院へと歩いていった。






そのころ、ジョイシティ前交番には爆発物処理班はまだ到着していなかった。
平次「まだ来よらへんのか?爆発物処理班は?」
その時だった。交番の中から、猿轡をされて喋れないはずのコナンの声が聞こえたのは。

コナン「服部!!」
服部「お、お前、縛られてて動けへんかったんとちゃうんか?」
コナン「何とかロープから抜け出せたんだよ。」
服部「それより、気いつけたほうがええんとちゃうか?すぐそばに高木ハンがおるんやで。」
コナン「あ、ああ。」
確かに、高木がいるすぐそばでコナンは平次のことを"服部"と呼んでしまっていた。
幸い高木は捜査本部との連絡のため、コナン達の方には全然気づいていなかったのだが。

平次「ま、今はこの爆弾を何とかする方が先やけどな。」
コナン「ああ。この爆弾はドアや窓を開けると爆発するように内側から仕掛けられてる。だが、交番の中にいたはずの犯人は中にはいない。」
平次「っつーことは、どこか1ヶ所だけ外に出てから仕掛けた場所があるっちゅうことやな。」
コナン「そういうこと。」
平次「よっしゃ。その場所、俺が探したるわ。」
コナン「頼む。その間に俺は何とか爆弾をバラせないかやってみる。」
平次「気いつけろよ。」
コナン「ああ。」
が、コナンが調べたところ、仕掛けられている爆弾はどうやら専門の器具が無いと解体できないようだった。

そこにようやく爆発物処理班(以降、処理班)が到着した。
平次「あった。ここや!」
唯一外から仕掛けられたと思われる場所を平次が見つけたのだ。
そこに高木刑事と処理班、内側にはコナンも集まってきた。
早速、処理班がその解体作業を始めた。





シューッ
米花不動総合病院の正面の自動ドアが開き、ベンツの男がゆっくりと中に入ってきた。
ベンツの男はゆっくりとロビーを横切り、エレベーターへと向かっていった。
その途中、車いすの患者に変装した千葉とそれを押す看護師に変装した佐藤とすれ違ったのだが、ベンツの男はそれに気づくことはなかった。
ベンツの男がエレベーターに乗り込んでしまってから、佐藤は持っていた無線機で男が来たことを連絡した。(無線機は、医療機器に影響を及ぼさない周波数のものを使用した。)

守の病室がある階に到着したベンツの男はエレベーターを降り、守の病室へと歩いていった。
佐藤と千葉も、ベンツの男から1〜2分遅れて隣のエレベーターで守の病室がある階に上がった。

医師に変装した白鳥も守の病室の前をうろついているのだが、迂闊に男に手を出す事は出来ない。
ジョイシティ前交番を爆破されればとんでもないことになる。

爆発物処理班からの、爆弾の解体終了の合図が来たら一斉に男の身柄を確保し、守を救出する。
それまでは、守の身に危害が及ばないよう、密かに尾行しながら監視するほか無かった。

ベンツの男は病室にはいると、守を抱え、すぐに廊下に出てきた。
そしてエレベーターに向かって歩き始めた。

佐藤と千葉は、先にエレベーターに乗り、1つ上の階に昇ってエレベーターの中で待機する。
そうすることによって、ベンツの男は佐藤と千葉が乗ったエレベーターを呼び出し、同じエレベーターに乗ることになるはずだった。が、
ベンツの男が呼び出しボタンを押すよりも早く、もう1機のエレベーターがちょうど到着してしまった。

白鳥(しまった!!)
計画が狂った事で白鳥は焦った。
すぐに佐藤達に下りてくるよう連絡をした。もう遅いが…

エレベーターの扉がゆっくりと開いていく。
まだ数センチの隙間しかないうちは人が出入りすることはできない。
ベンツの男は守を抱えながら、じっと待った。

そして扉が半分まで開いた。
まだ大人が出入りすることはできない。

次の瞬間、その隙間から何かが飛び出し、ベンツの男にぶつかった。それはコナンだった。

コナンがエレベーターから飛び出してベンツの男に体当たりしたのだった。
そしてベンツの男の腕の中から守を奪い返し、そのままベンツの男の後方約1メートルの所にスタッと着地した。

ベンツの男「お、おまえは?」
コナンはベンツの男の後ろに着地したので、ベンツの男は振り返りながら言った。

ベンツの男はコナンに飛びかかり守を取り戻そうとした。
しかしそれより早く、エレベーターの扉が全開になり、中から高木と平次が、ベンツの男に向かって飛びかかった。
さらに、佐藤と千葉も隣のエレベーターで遅れて到着し、4人がかりでベンツの男を取り押さえ、何とか爆弾のリモコンのスイッチを入れさせることなく逮捕することに成功した。

ベンツの男は白鳥警部のパトカーで、米花警察署へと搬送されていった。
犯人が逮捕されたことで病院の警備も解かれ、守も病室へと戻された。
コナンと平次も、病院を去っていくパトカーの後部座席から、遠ざかっていく病院を眺め安堵のため息をついたのだった。



米花警察署では、病院の警備と並行して、先に逮捕していた5010の取り調べが行われていた。
それにより組織の全貌が明るみに出ることになった。(奇術師の死闘7章漆黒のモレンド7章などを参照してください)


この米花警察署には、米花不動総合病院で起きた誘拐、狙撃事件と、米花ジョイシティで起きた大量殺人事件とが別の事件と思われていたため、
別々に捜査本部が設置されていたのだが、5010の証言により一つの組織の犯行だったことが判明したため、1つの捜査本部に統合されることになった。
5010の証言はさらに続いていた。

5010「…3281が支部長を務めていた関西支部では海外から麻薬や拳銃などの密輸・密売を担当し、
5648が支部長を務めていた九州支部では暗殺の依頼などを請け負い、8982が支部長を務めていた北海道支部では爆薬や毒薬を開発を行っていたわ。
でも、一番の取引先との契約が破棄されてしまってからは財力もなくなり、組織はどんどん廃れていってしまったわ。

そして組織の財政にさらに拍車をかけたのが8982の研究だった。
その研究のため組織の財源をほとんど使い切り、組織の人員を次々とモルモットにし、また、そうならなかったものも次々と組織から離れていったわ。
組織に残ったのはわずかな資金とナンバーエージェントだけになってしまった。」

そして、ベンツの男(5648)も捜査本部に到着し、並行してその取り調べもスタートした。

5648「ある理由で俺は前々から組織を潰そうと考えていた。その理由は言えないが、別に正義に目覚めた訳じゃない。
俺はずっとチャンスをうかがっていた。そして8982の毒薬のために組織が廃れ始めた1年前、チャンスと判断し決行したのだ。
 まず手始めに自らが支部長を務める九州支部を破壊した。放火されたように見せかけてな。
そして俺は放火で全てを失った哀れな男を演じ関西支部へと転がり込んだ。九州、関西、北海道支部長の3人は昔からの顔なじみだったからな。
3281は快く俺を招き入れてくれたよ。それから数ヶ月、関西支部を破壊するため、俺は隅々まで調べ回った。
そして3281がやっていることも知っていた。
 3281は部下の0717を使い、エターナルブルーとかいう宝石を狙わせたりしていた。(0717がボスと呼んでいたのは3281のことだ。)
0717はしくじり、逮捕された。(第3の予告状 参照)が、奴は脱獄した。

しかし奴は再びしくじった。

俺がわざわざ大柳良博を殺してエターナルブルーを取り戻してやったというのに。
2度しくじり逃げてきた0717を俺は殺した。(第3の予告状after 参照)
 同時に俺は北海道支部にも何度か尋ねていった。その内に北海道支部の5010と手を組んだ。
そして時間をかけ、計画を練っていった。
8982もその頃、組織衰退のために捨てた北海道支部旧本部だったトミノ高原リゾートホテルから残った資金を回収するPrime作戦(略してP作戦)の準備を行っていた。
 九州支部を潰してから約1年経った日、俺は8982のP作戦の進行の確認を装って北海道支部を訪ねた。
本来の目的は、5010と北海道支部陥落の手筈を確認することだったが…関西支部を潰した後、北海道支部を潰すため再び来るといい、俺は大阪へと戻った。
そして俺は大阪支部を破壊した。(奇術師の死闘2章 参照)

 この時、ある手違いが生じた。8982の部下だったレッドが裏切り、怪盗キッドらと共に北海道支部へと潜入した。
追いつめられた8982は自ら北海道支部を爆破した。おかげで俺の手間が省けた。(奇術師の死闘7章〜15章 参照)

その後、成田で俺は5010と落ち合い、どこにあるか分からない東京支部と本部を探すことにした。
俺も3281も8982も東京支部と本部の場所は知らされていなかったからな。場所がが分からなければそこにいる東京支部長とボスを倒せない。」

5010「神崎守を狙った理由は、彼の特殊な血液が8982の毒薬を作るのに必要なものだっだから。」

5648「神崎守がボスの手に届くのを阻止した理由だと?あとで調べて分かったことだが、8982の奴が死ぬ直前に毒薬の生成法を記載した
ファイルを本部に送りやがった。
奴の毒薬は完成までは組織の財産を食いつぶしていたが、完成したそれは逆に組織に富をもたらす可能性があった。
再び組織が立ち直れば、組織を倒すのが難しくなる。だから阻止しようとしたんだ。
 神崎守をその場で直接殺そうとしなかったのは、死体や血を残したくなかったからだ。
3281は逆に神崎守をボスの元に連れていこうとしていた、だから殺した。」

そして時刻は午後4時を過ぎた。

ジョイシティ前交番の爆弾解体もちょうどこのころ終了した。


同じ頃、中央アルプスの建物で逮捕された2001の取り調べが岐阜県警で始まっていた。
そこでの2001の証言は、刑事達に大きな衝撃を与えていた。

2001「私が組織のボスだ。」




17章へ続く

<Gahal様のあとがき>
というわけで、奇術師の死闘で出てきた“赤島陣一=レッド”というのはさりげなく伏線だったのです。
ちなみに“赤島鈴子”というのは“池羽鈴子”のことです。(池羽は旧姓)
残すはあと2章!!
Gahal様小説ありがとうございました☆
白馬と快斗、平次とコナン・・・ああ、いいコンビです(ぇ)
白馬と話してるキッドは素の快斗っぽく(笑)エレベーターのとこは手に汗握る展開でドキドキでした!
そしてクライマックスに近づくにつれ明らかになる真実・・・・残り2章なのぉぉ?!
byあっきー

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